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英国心理学会 (The British Psychological Society) -早期介入診断の目玉“attenuated psychosis syndrome (微弱精神病症候群) ”に重大懸念を表明

The British Psychological Society Condemns DSM 5
But goes too far in trashing all of psychiatric diagnosis
Published on July 27, 2011 by Allen J. Frances, M.D. in DSM5 in Distress

『英国心理学会、DSM 5 を非難』
精神科診断を全部ゴミにするのはやり過ぎだが

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DSM-Ⅳ タスクフォース議長 アラン・フランセス医学博士 (Allen J. Frances, M.D.)

5万人の会員を持ち、非常に高い評価を得る組織の英国心理学会 (The British Psychological Society = BPS)。その BPS が最近、米国精神医学会宛てた公開状でDSM 5を厳しく批判。批判内容の大部分は正鵠を射たもので、DSM 5 の危険な行き過ぎを正確に指摘したものである。しかしあまりに広義でポイントがぼやけ、説得力に欠くところも一部にあり、DSM 5 の行方を握る側にまともに取り合わない隙を与えてしまっている。DSM 5 の最終決定がいよいよ大詰めを迎える中、BRSの警鐘は真剣に考慮すべき内容のものであることから、これは残念なことである。

BPS の最も優れた点は、正常な多様性までをも医療に取り込もうとする DSM 5の提案を告発していることである。人生で遭遇する困難 (例えば人の死などによる「深い悲しみ」など) に対する当然の反応を精神病に変えてしまう傾向にあるDSM 5 に、BPS は説得力をもって猛反対しているのだ。公開状では、(例えば精神病の) リスク症候群、つまり、(mixed anxiety depression = 混合性不安抑うつ障害、mild neurocognitive = 軽度神経認知障害、binge eating=過食症 などの) 既存の精神障害に、弱く軽度のものまで DSM 5 に加えようという提案について特別の懸念を表明しているが、これは正しいことである。

BPS のこの部分の批判は歯切れよく、すべて事実であり、DSM 5 が持つ最悪かつ最も危険な問題の核心を突いている。正常な経験までも精神医療の対象にしてしまうことは、人の普通のありようにスティグマを付して安っぽいものにし、不必要で害となりうる薬剤による過剰治療を促すものである。しかし、精神科診断の全てを否定する BPS の批判は、あまりに行き過ぎたもので、それがゆえに茫漠としてしまっている。

その最たる例が、統合失調症と「精神病リスク症候群 (psychotic risk syndrome) 」(コロコロ名前を変えるのが好きなようで、最近では別名 "attenuated psychotic symptoms"(微弱精神病症状) と呼ばれる) を、全く無差別に拒否しているように思える点である。公開状では、これらが大なり小なり同じように不完全で価値のない概念であるかのように語られている。しかしこの2つは全くの別物である。「精神病リスク ('psychosis risk)」という問題の多い産湯を捨てるために、中にいる統合失調症という大切な赤ん坊まで捨てるようなもので、それがこの危険な産湯に対する議論 の説得力を弱める結果をもたらしている。

確かに統合失調症は、記述力、説明能力に限界のある不完全な概念である。多数の異なった症状があり、おそらくは何百もの異なった原因 (わかっている原因は一つもない) で起こるきわめて不均一なものである。このさまざまな統合失調症の発病、経過、重症度、そして治療に対する反応もまた、さまざまなのである。診断に利用できる生物学的テストもなく、近い将来に登場する見通しすら何一つない。それでも、やはり統合失調症は多くの情報を経済的に得るための価値ある診断であり、臨床ケアや臨床研究の (不完全でも) 有効な指針である。過去100年に蓄積された統合失調症に関する豊富な文献があり、少なくとも私たちがまだ知らない大まかな姿をそれらは示唆している。BPS は統合失調症を一つの概念として批判してはいるが、実行可能な代案を出していない。

一方、「精神病リスク」は比較的新しく登場したもので、その特性も全くわかっていない。どのように定義するのが一番良いかもわからず、それを正確に診断することもできず、治療法もわからず、治療したとしてもその永続的価値がわからず、仮に公式のものとして認められるようなことになれば、その結果としてどれほどの予期せぬ害がもたらされるかもわかっていないのだ。

なによりも特筆すべきことは、この研究にキャリアをささげ推進してきた学者の間にまで、精神病リスク症候群をDSM 5 に含めることに反対する意見が広がりを見せていることである。その転機となったのは、これまで精神病リスクをDSM 5 に含めることを支持し、強力に推し進めてきた著名な二人 (パトリック・マクゴーリ (Patrick McGorry) とアリソン・ヤン (Alison Yung)) が、その支持を撤回し、統合失調症の初期症状を治療することを目的とするオーストラリアの野心的な新しいメンタルヘルス・プログラムには組み入れないと公に断言したことである。

従って、今なお「精神病リスク」という鳴り物入りの新奇なものにしがみついているのはダイハードな連中だけなのであるが、不運にも最後のキャスティング・ボートを握っているのはそのテコでも動かない連中なのである。BPS がこの論争に加わり、この茶番を止めさせようと様々な立場から上がる声のコーラスに、力強い声が加わったのは素晴らしいことである。しかし、BPS は統合失調症という確立した概念までも同時にこき下ろそうとすることで、その価値あるメッセージを希釈してしまっている。

精神科の診断は確かに不完全ではあるが、同時にまた不可欠なものである。批判することは極めて容易であるが、現状ではそれに代わるものもない。外部から上がる非難の声も、反精神医学を唱える単なる攻撃に過ぎないものと片付けられてしまえば、それはDSM 5に携わる側に安心を与えてしまう (そしてこの"attenuated psychotic symptoms"という最悪の思い付きを擁護してしまう) ことになる。DSM 5 には検証と持続的な外部の批判は絶対に必要なものであり、またそれに値するものであるが、そのためには精神科診断の全てをターゲットにするのではなく、数多く存在する目に余るような欠陥を特定して批判のターゲットにするほうが、極めて有効だろう。

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● 英国心理学会の公開状にある“attenuated psychosis syndrome (微弱精神病症候群) ”について書かれた部分 (抜粋訳) 

Attenuated Psychosis Syndrome 

Response to the American Psychiatric Association:
DSM-5 Development

As stated in our general comments, we are concerned that clients and the general public are negatively affected by the continued and continuous medicalisation of their natural and normal responses to their experiences;responses which undoubtedly have distressing consequences which demand helping responses, but which do not reflect illnesses so much as normal individual variation.
概評に述べたように、経験に対する自然かつ正常な反応、つまり、援助反応を要求する明らかに苦悩に満ちた結果となる反応ではあるが、病気というよりはむしろ正常な個人の多様性の反映としての反応が、絶え間なく継続して医療の対象とされることにより、クライエントや一般国民が悪影響を受けていることを懸念する。

We believe that classifying these problems as ‘illnesses’ misses the relational context of problems and the undeniable social causation of many such problems.
こうした問題を「病気」と分類することは、問題の相関的背景や、そうした多くの問題の否定できない社会的因果関係を見逃すことになることを我々は確信する。

We have significant concerns over the inclusion of “attenuated psychosis syndrome”.
The concept of “attenuated psychosis system” appears very worrying;it looks like an opportunity to stigmatize eccentric people, and to lower the threshold for achieving a diagnosis of psychosis (and hence increasing the number the people receiving antipsychotic medication and a range of other social ills).
我々は“attenuated psychosis syndrome (微弱精神病症候群) ”を(DSMに)含めることを大いに懸念する。
“attenuated psychosis syndrome”という概念はきわめて憂慮すべきものであるように思える。風変わりな人間にスティグマを付し、精神病の診断基準に達するように閾値を下げる (それによって抗精神病薬を投与される人の数を増やし、その他さまざまな社会悪を増やす) 一つの機会となるように思われる。


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● アラン・フランセス氏が、「マクゴーリはオーストラリアの野心的な新しいメンタルヘルス・プログラムに“attenuated psychosis syndrome ”は組み入れないと公に断言した」と伝えるのは、おそらくTHE AUSTRALIAN 紙 の以下の記事 (一部抜粋訳)。

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Professor McGorry dismissed Professor Frances's attack as a "beat-up", and said no one received anti-psychotic drugs at his centres unless they had had a psychotic episode.
マクゴーリ教授はフランセス教授からの非難を「大げさな記事」として退け、精神病エピソード(症状の発現)がない限り、自身のセンターでは誰一人として抗精神病薬を投与されるものはないとした。

While Professor Frances agreed that Professor McGorry did not recommend anti-psychotic medication as a preventive measure, he feared general practitioners might overuse the drugs if they started using Professor McGorry's diagnostic tool for early psychosis.
マクゴーリ教授が予防手段として抗精神病薬を推奨しているわけではないことは認めながらも、フランセス教授が恐れるのは、一般開業医が早期精神病にマクゴーリ教授の診断ツールを使い始めるようになった場合の抗精神病薬の過剰使用である。

Professor Frances said in his Psychology Today blog that early intervention to prevent psychosis required first that there be an accurate tool to identify who would become psychotic.
ブログ"Psychology Today"でフランセス教授は、精神病予防のための早期介入には、誰が精神疾患を将来発病するかを見極める正確なツールがまず第一に必要であると記し、

"The false positive rate in selecting pre-psychosis is at least 60-70 per cent in the very best hands and may be as high as 90 per cent in general practice . . . these are totally unacceptable odds," he said.
「 "前-精神病 (prepsychosis)"を選択する際の偽陽性率は、たとえ最高の技術を持った専門医が行っても約60~70%であり、普通の医師なら90%にも上る」とする。

Professor McGorry agreed that false positive rates of diagnosing prepsychosis were high, but said the first line of treatment for people who had sub-threshold psychosis was supportive care.
マクゴーリ教授も前-精神病の偽陽性率が高いことには同意する。しかし、閾値下の精神病のある人達に対する第1選択の治療法は支持療法であるとした。

☆☆☆☆☆☆☆☆

「これまで精神病リスクをDSM 5 に含めることを支持し、強力に推し進めてきた著名な二人 (パトリック・マクゴーリ (Patrick McGorry) とアリソン・ヤン (Alison Yung)) が、その支持を撤回」し、反対に転じたのは、おそらく単にARMSやUHR、PLEs などに基づく偽陽性率が極めて高い前駆期治療に対する批判の高まりをかわして予算を獲得するためだけでなく、DSM ワーク・グループやその提案を評価する科学審査グループ (Scientific Review Group) への根回しが終わり、DSM 5に“attenuated psychosis syndrome (微弱精神病症候群) ”が加えられることがすでに決定してしまったと考えられる。

DSM-5 に記載さえされれば、二人は大きな任務を果たしたことになる。 あとは「権威」を保てばよい。
それがための「偽陽性率は高いが第1選択の治療法は支持療法」。

「風変わりな人間にスティグマを付し、精神病の診断基準に達するように閾値を下げる (それによって抗精神病薬を投与される人の数を増やし、その他さまざまな社会悪を増やす)」ことができ、「精神病リスク症候群にしがみつくダイハードな連中」が跋扈する日本の精神医療レベルでは、フランセス教授の言う開業医だけでなく、「権威ある有名大病院」においても誤診に次ぐ誤診、誤処方に次ぐ誤処方による薬物の多剤大量-てんこ盛り治療が、今後は子供や若者の間でさらに広がることになる。


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テーマ : 統合失調症
ジャンル : 心と身体

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